芸術鑑賞のススメ

 

 この間、錯視が用いられた作品が有名なオランダの版画家エッシャーの作品を観るべく、あべのハルカス美術館へ足を運んだ。

 

 生まれて此の方、純粋に芸術作品を観ることを目的に本格的な美術館に行ったことがなかったが、今回友人からの誘いを受け、行くこととなった。

 正直心配であった。この私に芸術を理解できるのか、と。確かに中学、高校の美術の授業も真面目に勉強する気がなく、ましてやムーミンの絵を描かせれば、もれなく肩幅の広いムーミンっぽいものが出来上がる始末。自分の絵の下手さは自分が一番よく知っている。悲しい。

 

 

 ここからは実際に作品を観た感想を述べていこう。

 「はえ〜〜〜〜〜」「すげ〜〜〜〜〜〜」「細かいな〜〜」「なんかよう分からん」

 「これ有名なやつやん」「はえ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

 最終的には、YES! プリキュア5の「スマイル go! go!」のワンフレーズを思わず口ずさんでしまった。「メタモルフォーゼ〜〜〜〜」(エッシャーの大作『メタモルフォーゼⅡ』に参照)。

 

 完全にIQが溶けている。

 そこらへんの幼稚園児に感想を求めても同じような感想が返ってくると思う。

 

 そんな私でも作品をよく観察して気づいたこともある。エッシャーは風景の版画作品を多く遺しているが、その多くはほとんど写真と遜色がないほど細かく描かれている。よ〜く観察すると、建物の陰影や波まで細かく表現されているのである。

 『昼と夜』という作品では、忠実に左右対称に風景が描かれているのだが、これは版画作品であり、エッシャーの頭の中では常に完成図が描かれながら作品を描いていることに驚きである。どれだけ見ても左右で間違いを発見することはできなかった。

 誰でも一度は見たことがある『滝』の作品をこの目で間近で観ることができたのは貴重な体験だったと思う。これでエッシャーに関しては他人にマウントを取ることができるぞ!やったね!

 

 

 この日は祝日だったこともあり、親子で観に来ている家族が多く見られた。その子供は作品を観て何を感じて思ったのだろうか。親は子供に何を教えてあげることができたのだろうか。おそらく、自分と同じようにIQを溶かしていたに違いない。おそらく。

 

 ということは芸術鑑賞をして個人が何を考えようと勝手なのだと自己解釈する。

 だから、IQを溶かしながら「メタモルフォーゼ〜〜〜〜」と口ずさんでいても間違いではなかったと信じたい。

 

 

 こう考えるとこれからは少しくらい芸術鑑賞の機会を設けてもいいのかもしれない。

 個人的に行ってみたい美術館は徳島県鳴門市にある大塚国際美術館である。この美術館の特徴は、展示されている作品すべてが陶板で再現された世界中の有名な作品が多数展示されていることである。『最後の晩餐』や『モナリザ』なども原寸大で再現されている。これは一日中居ても飽きなさそうだ。

 

 徳島に住んでいたこともあったので、その時に行っておけばよかったなと後悔の念はあるが、色々と落ち着いた頃に一度訪れてみたい。私と一緒にIQを溶かして芸術鑑賞をしてくれる友人を連れて。